なんだか大げさなタイトルですが、このタイトルでの講演の録画を見る機会がありました。
講演したのは、ロバート・ウォールディンガーという精神科医の方です。
「あなたにとって幸せの条件ってなんですか?お金?それとも愛情?
今日はあのハーバード大学が75年もの歳月をかけて解明した幸せになる秘訣をお教えします。 75年の研究からわかったこと。幸せになるには、○○○○が必要なんです。」
こんな感じで始まりました。すでに私は前のめり。
内容を簡単に書いて行きます。
1938年にアメリカボストンで始まったプロジェクトのお話です。
およそ700人の若者の体と心の発達を生涯にわたって記録しようという学術調査です。
その目的は健康で幸せな人生を送る秘訣を探ること。
対象は、2グループの男性。一つのグループは、ハーバード大学の学生です。彼らは第二次世界大戦中に卒業。多くは戦争に行きました。
もう一つのグループは、ボストンの最貧困層の青少年。貧しい子たちを集めたのです。当時ボストンで最も苦しい生活をしていた家庭の子たち。安アパートで生活。水道がない家も多かったそうです。
そして、彼らは大人になりさまざまな職につきました。工場で働く人、弁護士、れんが職人、医者、一人はアメリカ大統領になりました。 アルコール依存症になった人、統合失調症になった人もいたそうです。
社会の底辺からトップに登りつめた人も、逆に転落した人も。
それで、どんな事がわかったか、参加者の人生に関する何万ページもの資料からわかったこと。それは、富や名声、一生懸命働くことの大切さでなく、この75年にわたる研究からわかったのは、いい人間関係が、幸せと健康の秘訣だということ。
研究者達は、3つの大きな教訓を得たそうです。
1つ目の教訓。人とのつながりは良い。孤独は悪い。家族や友人や地域とのつながりが強い人は、つながりが弱い人より、幸せだし、健康だし、長生きするそうです。
そして孤独は害を及ぼす。自分が好むようなつながりを持つことができていない人は、幸福度が低い。健康の衰えが早く始まり、脳機能の低下も早く起こる。寿命も短くなります。アメリカ人の5人に1人が孤独を感じているそうです。
そして、集団や結婚生活の中でも孤独は起こりうる。それで2つ目の大きな教訓。
重要なのは、友達の数や結婚しているかどうかではなくて、身近な人たちとの人間関係の質。いざこざは健康に非常に悪い。例えば、喧嘩ばかりしていて愛のない結婚生活、それは離婚するよりも悪い。あたたかい人間関係は、私たちを守ってくれる。
研究参加者が80代になったとき、彼らの中年の頃のデータに遡って何が80代の幸せと健康につながるのか調べてみたそうです。
彼らが50代だった時のデータをみて徹底調査をしてみると、重要なのは当時のコレステロール値ではなく、人間関係の満足度、ということがわかりました。50の時、人間関係にとても満足していた人は、80の時とても健康。いい人間関係には老化を防止する効果もあるようです。それにパートナーといて幸せだという80代の人は、体に痛みが出ても幸せでいられるとの事。これが相手との関係が悪い人だと、精神的なストレスによって体の痛みがよりひどくなる。
そして3つ目の大きな教訓。いい人間関係は、私たちの体だけでなく、脳をも守ってくれる。80代で、パートナーとの信頼関係がしっかりしている人、困ったときには相手に頼れると感じている人、そういう人は頭の老化が進みにくい。一方、相手に頼れると思っていない人は、記憶力の低下が早くはじまる。いい人間関係というのは、常に穏やかでなくてもよくて、しょっちゅう口喧嘩したって大丈夫。いざと言う時相手に頼れるという関係性があればいくら口喧嘩しても大丈夫。
深い人間関係を築くことができれば健康で幸せな人生を送れる。これは昔からわかっていたこと。ではなぜそれがなかなかできないのか。だって人間ですから。人は楽をしたがる。てっとり早くいい人生を手に入れたい。人間関係は、複雑だし面倒くさい。家族や友人と付き合うって楽しいことばかりじゃない。大変なことです。それが一生続きます。研究参加者の中で幸せな老後を送っているのは退職後、積極的に遊び仲間をつくった人たちだそうです。
そして、研究参加者の多くも若い頃はこう思っていたそうです。
「いい人生を送るためには、名声や富や成功だ」と。けれど75年にわたる研究をみてみると一番いい人生を送っているのは、家族や友人、地域での人間関係に頑張った人だそうです。
そして講演は、こう続きました。
『皆さんは、どうですか?25の人、40の人、60の人、人間関係をどう頑張るのか出来ることはいくらでもあります。
例えば液晶画面でなく、もっと人と向き合う。パートナーと一緒に何か始めてみる。散歩する。デートする。疎遠になっている家族に連絡をとってみる。
家族間の確執というのは恨みを持っている本人へダメージが実に大きいんです。
マークトゥィーンの言葉で締めたいと思います。今から100年以上前、彼は自分の人生をふり返って、こんな言葉を残しました。
「人生は、実にはかないものだ。争いや謝罪、嫉妬、責任追及などしている時間はない。あるのは愛するための時間だけ。それもわずかな時間だけだ。いい人生を送るためにはいい人間関係が必要なんです。」』
簡単に書くつもりが長くなってしまいました。
でも、もう少しだけ。
この後、『良い人間関係を築ける人に共通する特徴はありますか』との質問がありました。
その答えは、
『あります。共通する特徴は、柔軟性でしょうか。自分中心に他人を動かそうとする人はトラブルを抱えることが多い。人をコントロールすることなんて不可能ですからね。柔軟性があり、他人の考えを尊重出来ることが、人間関係をうまく維持したり、困難を乗り越えるために必要な要素です。人それぞれ考え方は違いますからね。同じ状況でも違う視点から見ることになる、そういう状況にも対応できないと人間関係は維持していけないのです。』でした。
いや、耳が痛いです。かなり、耳が痛いです。
でもなんだか、すがすがしい気分になりました。
身近な人間関係、見直して、大切にしていきたいです。そして幸せなばあちゃんになりたいです。
担当ーH